塗装環境による塗装不良への対策1|寒過ぎる、暑過ぎる場合
皆さんは工業系の塗装会社の工場というと、どのようなイメージを抱いていますか? 多くの人は、クリーンルームが完備され、塗装ラインは全自動化、さらに自動塗装機や塗装ロボットによる塗装が行われ・・といったイメージをお持ちかもしれません。実際にそのように塗装環境が整備された塗装工場は、国内外を問わずに少なからず存在します。しかし、現存する多くの塗装工場では、そこまでの塗装環境は無く、その場合、どのような工夫や対策をして、塗装製品の品質管理に努めているのか・・というお話を今回はさせていただきます。
塗装不良を減らすために
塗装会社は会社の規模や取り扱う製品により、最低限の塗装環境と設備で業務を行っているケースが多くあります。私たち技研グループの工場もクリーンルームを設置しているのでは無く、塗装ブースへの吸気は自然吸気による方式をとっています。この場合、季節よる温度の変化や湿度の変化、天候の影響など、外部環境の影響を強く受けてしまいます。対策として、独自のレイアウトやノウハウを採用し、季節ごとの塗装条件を変えるなど、工夫しながら業務を行っています。そうすることで、異物混入や、寒暖差、湿気の変動による塗装不良を減らしています。
以下に紹介する事例は、塗装に関わっているプロとしては当たり前のことですが、改めて、技研グループが行っている対策や工夫について解説します。
寒過ぎる場合
気温が低いと塗料の粘度が上がり、通常よりも塗料が塗装に適した霧化が難しくなります。そのため、均一に塗装するのが困難になります。温度のほかにも湿度が影響するので配慮が必要です。製品温度に応じた乾燥時間の設定や温度管理が必要となります。
対策
1 塗料を適切な温度まで温める
ヒーターを使用して塗料の温度を一定に定めることで、適切な塗装性を付与できます。
2 工場内の温度を温める
エアコンや放熱器を使用して、工場内の温度を適正な温度範囲内に保ちます。
3 希釈溶剤を変更
溶剤を冬用の溶剤に変更し、低い温度でも溶剤が揮発しやすくなるように設定します。
4 製品を温める
製品自体を温めて塗装性を良くします。
暑過ぎる場合
高温下では塗料が早く乾燥し、十分なレベリングが得られず、ゆず肌(オレンジピール)や、塗膜のザラツキが発生しやすくなります。さらに、ザラツキを防ごうとするあまり、厚膜による塗装不良を誘発する可能性が高まります。厚膜になってしまうと、効果不良やクラックなどが発生しやすくなってしまいます。2液硬化タイプの塗料の場合は、ポットライフが著しく短くなるなどの影響があります。以上のことから、塗料の温度や使用時間への注意が必要になります。さらに、製品自体への直接の影響はありませんが、作業者の熱中症の危険性も考えなければなりません。
対策
1 工場内の温度を下げる
冷却装置や扇風機を設置し、工場内の温度を下げる工夫をします。
2 高温に適した塗料と希釈溶剤を選択する
沸点の高い希釈溶剤を選び塗装作業性や乾燥性が良くなるように調整します。
3 熱中症対策
作業者には頻繁な休憩と水分補給を心がけ、熱中症対策徹底させます。
画像/空調服による暑さ対策
次回は同じテーマで、湿度と強風への対策について書いていきます。
技研グループでは塗装加工に関して、お客様の使用環境や用途をお伺いし、様々なご提案させていただいております。ご要望に応じた塗料の選定や、塗装工法のご提案などを積極的に行っています。
「塗装や塗料に関するこういう情報が欲しい」
「こんな機能性を持った塗装をして欲しい」
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